IPが鍵を握るモバイルゲーム銘柄6選:各社の戦略とは

MIXI

成熟期を迎えたモバイルゲーム市場。ここでは、単なるヒット作の創出だけでなく、IP(知的財産)の多角的な活用、ユーザー同士のコミュニケーション促進、そして技術革新が成功の鍵を握っています。

このような環境下で、主要なゲーム関連企業は、それぞれのDNAと強みを活かし、独自の成長戦略を描いています。

長年培った技術力を基盤に、ゲームの枠を超えて事業領域を広げる企業、強力なIPを軸に玩具や映像など多様な出口戦略でファンを魅了する企業、一つの大ヒットタイトルを大切に育て、コミュニティと共に歩む企業など、各社はさまざまな取組を行っています。

本記事では、こうした個性豊かな企業たちが、どのようにして変化の波を乗りこなし、ユーザーに新たな「楽しさ」と「驚き」を提供しようとしているのかを紹介していきます。

"永久ベンチャー"精神でネットとリアルを繋ぐ「ディー・エヌ・エー」

ディー・エヌ・エーは、「永久ベンチャー」というコンセプトを掲げ、エンターテインメント領域と社会課題領域という二つの分野で事業を展開する企業です。

インターネットサービスの開発・運営で培った技術力とノウハウを基盤に、モバイルゲームからライブストリーミング、スポーツ、ヘルスケア・メディカルへと事業を拡張しています。

同社の中核事業の一つであるモバイルゲーム事業では、「Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)」や「逆転オセロニア」といった人気タイトルを展開。自社開発のみならず、有力なIPホルダーとの協業による多様なスマートフォン向けゲームを国内外に配信しています。

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この事業を支えるのは、長年のサービス運営で培ったデータ分析力や、大規模なアクセスに対応できるインフラ技術といった「技術・モノづくり」の力です。

加えて、多様な専門性を持つ人材が集い、事業の垣根を越えて協力する「組織・人材」の力も、同社の競争優位性の源泉となっています。

一方で、ディー・エヌ・エーはゲーム事業が持つ収益変動性の高さを認識しており、近年は事業ポートフォリオの再構築を進めています。ゲーム事業への依存度を調整し、ライブストリーミング事業やスポーツ事業など、複数の収益の柱を育てることで、より安定した成長基盤の構築を目指す動きです。

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モンストが根強く人気の「MIXI」

MIXIでは、「デジタルエンターテインメント事業」を通じて、スマートデバイス向けゲームを提供。この事業の主力であり、会社の成長を牽引してきたのが、ひっぱりハンティングRPG『モンスターストライク(モンスト)』です。

モンストの最大の強みは、スマートフォンの特性を活かした爽快なアクション性に加え、最大4人まで同時に遊べる協力プレイ機能にあります。

この機能が、友人や家族と「集まって一緒に楽しむ」というコミュニケーションの場と機会を創出し、リリースから長年経った今でも、特に若年層を中心に強い支持を獲得。2024年にLINEリサーチが行った調査では、男性がハマっているスマホゲームで3位にランクインしています。

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MIXIは、単にゲームを提供するだけでなく、『モンスト』や『共闘ことばRPG コトダマン』といったタイトルを通じて、ユーザー間の豊かなコミュニケーションを生み出すことを重視。その根底には、「ユーザーサプライズファースト」という、ユーザーの期待を超える価値を提供しようとする強い意志があります。

一方で、主力タイトルへの収益依存という課題も認識しており、新たな収益の柱を確立するため、M&Aや国内外への戦略的投資も積極的に行っています。

「コミュニケーション」という普遍的な価値を軸に、テクノロジーとカルチャーを融合させ、新たなエンターテインメント体験と社会とのつながりを創出しようとするMIXI。その挑戦は、デジタルエンターテインメント事業の枠を超えて広がっています。

>MIXIがオーストラリアのベッティング事業者を買収。その背景にある戦略とは?

パズドラだけでなくMMORPGも展開「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」

ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)は、スマートフォン、パソコン、家庭用ゲーム機向けにオンラインゲームの企画・開発・配信・運営を手掛ける企業です。

同社の名を広く知らしめたのは、13周年を迎えた今もなお多くのユーザーに支持されるパズルRPG『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』です。

ゲーム業界は技術革新のスピードが速く、ユーザーニーズも多様化しています。新たなタイトルが次々と登場し、ユーザー獲得競争が激化する中で、ガンホーは「既存価値の最大化」を重要な経営戦略として掲げており、既存の有力タイトルを長期的に愛されるブランドへと育て上げることを目指しています。

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その中核である『パズドラ』では、MAU(月間アクティブユーザー)の維持・拡大を図るとともに、キャラクターグッズの販売といった多面的な展開を通じて、ゲームの枠を超えたブランド価値向上に取り組んでいます。

また、長年培ってきたPCオンラインゲームの経験とノウハウを活かしたMMORPGである『ラグナロク』シリーズのようなタイトルの展開に注力するとともに、グローバル市場を見据えたゲーム開発や展開を進めています。

ガンホーは企画・開発力と運営ノウハウを武器に、新たなキラーコンテンツの創出と、既存タイトルのブランド価値向上という両輪で、持続的な成長を目指しています。

IP軸戦略で世界中のファンと繋がる「バンダイナムコ」

バンダイナムコグループは、「ガンダム」シリーズや「ラブライブ!」シリーズといった強力なIPを多数保有し、これを軸とした多角的な事業展開を得意とする企業です。

その中で、スマートフォン向けゲームを含む「デジタル事業」は、エンターテインメントユニットの中核として重要な役割を担っています。

同社のモバイルゲーム事業は、既存の強力なIPを活用したタイトル開発が大きな特徴です。「SDガンダム ジージェネレーション エターナル」のように、原作の世界観や物語を深く追体験できるゲーム性は、多くのファンから支持を集めています。また、同社は既存IPの活用に留まらず、新規IPの創出にも積極的に取り組んでいます。

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同社の強みは、保有するIPをゲームだけでなく、トイホビーやIPプロデュース事業など、多様な「出口」で展開できる点にあります。

また、グループ全体で収集したデータを分析し、マーケティングや商品企画に活かす「データユニバース構想」も推進。外部パートナーとの連携も強化し、創出力の向上を図っています。

強力なIPポートフォリオと、それを世界中のファンに届けるための多角的な戦略、そして新たな価値創造への挑戦を通じて、バンダイナムコグループは事業展開を進めています。

>「IP軸戦略」で飛躍的な発展!バンダイナムコホールディングスの変遷

遊戯王・パワプロなど強力IPを活かす「コナミグループ」

コナミグループは、「エンタテインメント」と「スポーツ」を事業領域とし、その中核を担うのが「デジタルエンタテインメント事業」です。

この事業では、「eFootball」「パワフルプロ野球」「遊戯王」といった、国内外で絶大な知名度と長年のファンを持つ強力なIPを活かし、モバイルゲーム、家庭用ゲーム、カードゲームなどをグローバルに展開しています。

同社のモバイルゲーム事業は、これらの豊富なIPが最大の強みです。10周年を迎えたスマートフォン版の『実況パワフルプロ野球』、累計DL数6,200万を超える『プロ野球スピリッツA』、さらに8,000万DL超の『遊戯王 マスターデュエル』など、数々のヒットタイトルを擁し、安定したファンベースを築いています。

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コナミグループは、個々のIPを大切に育てるだけでなく、時代の変化と技術の進化を捉えた戦略的な展開が特徴です。

早くからモバイルゲーム市場に参入し、近年ではモバイル、家庭用ゲーム機、PCといったデバイスの垣根を越えて遊べる「クロスプラットフォーム」を推進。『eFootball』や『遊戯王 マスターデュエル』はその代表例であり、ユーザーに多様なプレイ環境を提供しています。

また、ゲームを競技として捉える「eスポーツ」分野においても、積極的に大会を開催し、業界の活性化に貢献。これは、ゲームタイトルの新たな魅力を引き出し、ファン層を拡大する重要な取り組みです。

強力なIPポートフォリオと、それを活かす技術力、そして時代を先読みする戦略。これらを武器に、コナミグループはデジタルエンタテインメント領域でサービスを創出し、事業を展開しています。

モンスト開発のでらゲーを傘下に「ケイブ」

ケイブグループは、スマートフォンゲームの開発・運営・受託を行う「ゲーム事業」を中核とする企業です。

連結子会社である株式会社でらゲーは、株式会社MIXIが提供する人気タイトル『モンスターストライク』の開発・運営に関与しており、この取り組みは当社グループのゲーム事業における収益源の一つとなっています。

でらゲーでは『キングダム乱 -天下統一への道-』などの既存タイトルの長期運営にも注力しており、周年イベントやファンとの交流を通じて、ユーザーエンゲージメントの強化を図っています。

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また、ケイブでも『ゴシックは魔法乙女』のような自社IPタイトルで、ファンとの交流を深めながら長期的な運営に注力。さらに、『東方幻想エクリプス』といった新たなIPタイトルの育成や、製作委員会方式による新規タイトル『メテオアリーナ』のリリースなど、ポートフォリオの拡充にも積極的に取り組んでいます。

世界のモバイルゲーム市場は、開発費の高騰や競争激化といった課題を抱えています。ケイブグループは、こうした環境に対応するため、ヒット作の実績を持つでらゲーとの連携を深めるとともに、受託事業を強化することで収益基盤の安定化を図る戦略です。